離婚時の財産はどう扱う?|財産分与の考え方を弁護士が解説
法的手続の解説等 | 離婚
2020.10.12
離婚の際には、夫婦でそれまでに築いてきた財産をどのようにして分けるかを決めなければなりません。これを「財産分与」といいます。
協議離婚をした場合の財産分与
協議離婚とは、夫婦でお互い離婚に合意したうえ、離婚届を市区町村役場に提出するという、一般的な離婚方法です。
離婚時に子どもがいる場合は、親権をどちらが持つかを決めなければいけません。その他に、婚姻中に夫婦が共有の財産を築いている場合には、共有財産をどのように分けるのかを決めることになります。(民法768条1項)。離婚が成立したら、まずは夫婦で財産の分け方を協議しましょう。
共有財産に関する協議がまとまらなかった場合の財産分与
当事者間の協議で財産の分け方がまとまらない場合は、家庭裁判所において協議に代わる処分をするように申し立てることが可能です(民法768条2項)。協議がまとまらないと思われる場合は、裁判所において財産分与の額及び方法を決めるのがよいでしょう。
なお、離婚時の財産分与は必須の要件ではなく、離婚が成立した後でも財産分与の請求は可能です。ただし、離婚成立後2年を経過したときは、裁判所に対して申し立てができません。請求する相手方との間で協議が整わない可能性がある場合は、離婚届の提出をしないか、または、早めに裁判所に申し立てる必要がありますので、注意してください(民法768条2項)。
財産分与の基本的な考え方
財産分与では、「結婚してから離婚するまでに形成された財産について、夫婦が財産形成にどれだけ寄与したかを考慮し、公平に分ける」が基本的な考え方です。
裁判所での分与割合の原則は、1:1です。そこから、夫婦が財産の形成にどれだけ寄与したかによって具体的に判断していきます。しかし、この判断は単純に収入割合で決まるものではありません。たとえば夫婦の一方が働いて家計を支え、もう一方が家事を行って生活を支えていることもあるからです。
なお、プラスの財産(預貯金や不動産等)からマイナスの財産(住宅ローンや車のローン等)を差し引いた結果、マイナスの方が大きい場合(債務超過となる場合)には、そもそも形成した財産がないため、財産分与はできないとされます。
結婚前の預金はどうなる?
財産分与の対象となる財産は、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産です。それに対して、夫婦がそれぞれ個別に取得した財産のことを特有財産といいます。婚姻前に貯めた預貯金や、婚姻中に相続によって取得した不動産等は、夫婦が協力して築いた財産とはいえないので、財産分与の対象とはなりません。
財産分与は、いつを基準にして行われる?
財産分与は、具体的な年月を「財産分与の基準時」として定め、その時点で存在した財産を分与の対象とします。財産分与の基準時は、以下のように定めます。
- 離婚成立前に別居が成立している場合:別居時点
- 離婚成立まで同居している場合:離婚成立の時点
夫婦の共有財産は生活費に費消されたりしますので、時期によって額が変動します。そのため、「お互いの財産形成に対する協力関係が終了した時期」を財産分与の基準時とするのが一般的です。
財産の評価方法
財産分与の対象となる財産は、以下のように金銭的に評価されます。
①預貯金
日本円については、婚姻時の金額と基準時の金額の差額で計算します。外貨については、基準時の為替レートによって換算します。
②不動産
基準時の時価(売却した際の金額)で評価します。複数の不動産業者による査定を基に、その平均的な時価を基準とすることが一般的です。固定資産評価額を基準とすることもあります。
ただし、住宅ローン残額がある場合には、処理で争いが生じることが多いです。住宅を売却するか、どちらかが住み続けるか、夫婦の事情に応じて柔軟な解決策が図られます。
③生命保険
基準時に解約したと仮定し、解約返戻金を算出します。婚姻前から生命保険に加入していた場合には、婚姻前の部分は特有財産になりますので、特有財産部分を差し引くことで算出します。
④退職金
すでに支払われている退職金は、労働に対する事後的な金銭的評価といえることから、財産分与の対象となると考えられます。一方で、未だ退職金が支払われていない時点では、将来の退職金の算定方法について不確実な部分が多く、裁判所での見解も定まっていません。よって、離婚時に退職したと仮定して支給額を算出する方法が一般的です。もっとも、将来の退職金は財産分与時には手元に無いため、事案に応じて、財産分与のその他一切の事情として総合的に考慮されることが妥当です。
まとめ
離婚時には、婚姻時の財産と、財産分与の基準時の財産を明確にし、個々の事案にあった解決策をみつける必要があります。しかし、夫婦間の協議ではスムーズにまとまらないこともあります。
財産分与の適切な解決を手助けするのも弁護士の役目です。つまずいたときには、ぜひ弁護士に相談してみてください。
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