学校が行うべき「いじめ」への対応とは【法律的観点から解説】
法的手続の解説等 | いじめ対応
2020.09.07
法律上は,学校の複数の教職員によって、心理・福祉に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童・生徒又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童・生徒に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとされています(いじめ防止対策基本法第23条3項)。
法律による「いじめ」の定義
いじめ防止対策推進法第2条1項
「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
いじめ防止対策基本法は、「いじめ」が類型化しにくいものであること等を理由に、「いじめ」に該当する範囲を比較的広く設定しています。
LINE等のSNSにおいて特定の児童・生徒のみをグループに参加させない等の行為も、当事者である児童・生徒がそれを認識していれば、「心理的又は物理的な影響を与える行為」に該当します。したがって同法の定義によれば、この行為で当該児童・生徒が心理的な苦痛を感じる場合は「いじめ」に該当することになるのです。
「いじめ」に対して、学校側には速やかな対応が求められる
そもそも法律上では、学校はいじめ防止等の対策のための組織を置くことになっています。また、児童・生徒や保護者からいじめに関する相談を受けたときには、適切な措置をとったり、いじめの事実の有無の確認を行うための措置を講じたりする義務を負っています。したがって、学校の立場でいじめを認知できていない場合は、法律上しかるべき対応をしていなかったと評価されるおそれがあります。
弊所で対応している案件では、学校がいじめの事実を認識するのは、いじめを受けたとする児童・生徒の保護者からの報告によることが多い印象です。弊所に相談される案件は、学校現場での対応がすでに困難となっている事案です。想像になりますが,現場の教員において上記のような対策を十分に講じ、いじめが重大化する前に対応ができていれば、保護者から学校へ通告する事態が生じることもないのかもしれません。
児童・生徒がいじめについて保護者に話すのは、心理的な抵抗が大きいはずです。加えて保護者側からすれば、「学校が適切な対応をしていなかったから、いじめが重大化した」との思いを持つこともあるでしょう。したがって、いじめを事前に防止するのに加え、いじめに繋がりかねない状況が発生した場合は、速やかに指導することが重要です。
いじめが重大化する前に、教育委員会や弁護士に相談を
いじめの事実の有無等の調査は、非常に難しいことが多いです。防犯カメラに録画されている等のシチュエーションはほぼありませんし、児童・生徒のスマートフォン等を強制的に提出させることもできません。「いじめ」の有無は児童・生徒からの聴き取りを中心に確認する必要があります。しかし、特に小学生低学年の場合は、時間の経過によって記憶が変容したり、自分にとって不都合な事実(実際には児童・生徒がそのように考えているだけのこともあります)を話さなかったりすることも多いので、正確な事実の把握が困難です。その場合であっても、学校はいじめ発生の原因を確認し、再発防止策を策定する必要があります。
ただし、どこまで調査するのかという点と、再発防止策としてどこまで行う必要があるのかという点については、いじめの態様や重大性によります。なるべく早いうちに教育委員会やいじめ等の問題に詳しい弁護士に相談することが重要です。
おわりに
弊所は、複数の私立学校や教育委員会等の顧問を務めていることを特色としています。学校側におけるいじめへの対応の経験を有する弁護士は多くはないと思いますので、対応が必要な場合は、ぜひ弊所までご連絡ください。
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