社会人がよく聞く「経費で落とす」の意味とは?【弁護士が解説】
その他
2020.08.31
私的な支払いは会社の経費で落とせない
会社の業務を行う際に、交通費や接待・交際費等を自身で立て替えて払った場合には、会社へ経費精算を申請し、立て替えた分の支払いを受けるのが通常ですよね。
では、実際には私的な移動や飲食なのにも関わらず、
- 取引先に訪問した
- 取引先の方と打ち合わせのために食事した
などの内容で経費申請した場合、法的に何かまずいことがあるのでしょうか。
上記では、実際には会社の業務に関連して使用したものではない私的な金額を、会社の業務に関連して使用したものであると偽って申請しています。つまり経理担当者等を騙して金銭の支払をさせているため、詐欺罪に該当するおそれがあります。
また、会社毎に定めている規定にも反すると考えられますので、会社から懲戒されるおそれもあります。
「誰が損なのか?」が論点
税法上「経費」として認められるのか否かはさておき、代表取締役が会社の株式のほとんどを所有している場合には、詐欺罪や横領罪等に該当しません。なぜなら、会社のお金を私的に使ったとしても、最終的に損失を被るのは株主である代表取締役自身だからです。
政務活動費は無制限に交付されない
場面は変わって、次は法律上定められている地方議会の議員の政務活動費について考えてみます。地方議会の議員が架空の領収証を用いて政務活動費の支給を申請した場合です。
地方自治法100条14項によると、地方自治体の会派又は議員に対しては政務活動費が交付されます。ただし当然ながら、政務活動費は無制限に交付されるわけではありません。政務活動費の財源は市民の収めた税金です。交付の対象、額及び交付の方法並びに政務活動費を充てることができる経費の範囲は、条例で定めなければならないとしています。
政務活動費を定めた具体例
たとえば富山県では、富山県政務活動費の交付に関する条例に「政務活動費は会派に対して交付されること」とあります。また政務活動費に充てられる経費の範囲として、以下のように定めています。
会派が実施する調査研究、研修、広聴広報、要請陳情、住民相談、各種会議への参加等県政の課題及び県民の意思を把握し、県政に反映させる活動その他の住民福祉の増進を図るために必要な活動
例えば「資料購入費」は「会派が行う活動に必要な図書、資料等の購入、利用に要する経費」と規定されています。この規定からすれば、全く関係のない漫画本等の購入に対して、政務活動費は交付されません。
今回の質問の場合は、政務活動と関連性のない支出というだけでなく、そもそも架空の支出について「資料購入のために支払った」などと虚偽の事実をもって支給を申請するものです。このような場合には、詐欺罪が成立する要件を満たしているものといえます。
まとめ
漫画やドラマの世界で「経費」というと、まるで魔法の財布のように聞こえますが、もちろん実際はそうではありません。誤った使い方をすれば会社や周りからの社会的評価が下がるだけでなく、嘘の申請をした場合には詐欺罪に問われるおそれもあります。万が一、意識せずトラブルに発展したり、困りごとができたりした場合は、早いうちに弁護士に相談しましょう。
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執筆担当 梶