訴える相手の居場所がわからないとき、どうやって裁判するの?【弁護士が解説】
法的手続の解説等 | 民事訴訟一般
2020.08.10
裁判を開始する際の手続き
民事裁判手続の法律上の要件は、民事訴訟法(以下、「民訴法」)に規定されています。民事裁判は公正な判断を下すために、適正な手続を経て進めなければならないためです。相手の居場所がわからない場合の手続きの進め方についても規定がありますので、解説していきます。
1.訴えの提起
訴えの提起(「訴訟提起」ともいいます。)をするとき、原告(民事裁判において訴えを提起する者)が裁判所へ提出した訴状は、裁判を始める前に被告(民事裁判において訴えを提起された者)に送達されなければなりません(民訴法138条1項)。原告は訴状の正本(裁判所用)・副本(被告用)を裁判所に提出します。正本と副本を受け取った裁判所は、そのうち副本を特別送達という形式で被告へ郵送します。送達先は、被告の住所、居所、営業所又は事務所のいずれかです(民訴法103条1項、民事訴訟規則58条1項)。
2.訴状が被告に送達されると
訴状が被告に届いた場合(「送達された」といいます。)、訴訟を開始する要件が整いますので、裁判所によって第一回口頭弁論が開かれます。反対に、送達がされない場合は、被告において訴えが提起されたことを認識できませんので、裁判も開始できません。
しかし、被告本人が何らかの理由で訴状を受け取らない場合や、所在不明を理由に裁判が始められないとすれば、せっかく訴えを提起しても、裁判を通じた権利の実現が不可能となってしまいます。そこで民事訴訟法は、以下の制度を設けて、訴状の送達と同じ効果を発生させるとしています。
訴状が送達されたことにする制度とは?
1.付郵便
付郵便送達といわれる制度です。簡単に言えば訴状を書留郵便で法律上定められた場所に送付し、発送をした段階で送達があったものとします。
しかし被告側からすれば、気付かないうちに送達がなされてしまい、裁判が知らない間に開始され、敗訴してしまうことになると非常に怖いですよね。よって、以下の全てに該当する場合のみ、付郵便制度で訴状の送達ができます。
①訴状が被告の住所地、居所、営業所又は事業所に届かない。
②就業場所等に訴状を送達しても届かない。
③就業場所の相当のわきまえを有する者※に交付する方法でも、訴状が送達できない。
※相当のわきまえを有する者=書類の送達の趣旨を了解し、送達を受けるべき本人に交付することを期待しうる能力を有する者、使用人その他の従業者又は同居者
②〜③のような例外的な場合でも送達ができない場合に限って、付郵便制度で送達ができます。したがって、知らないうちに訴状が送達され、裁判が開始されていることは通常ありません。ただし、同居の家族が訴状を受け取っていて、被告本人に渡すのを忘れていた例は聞いたことがありますので、その点は気を付けておくべきかもしれません。
2.公示送達
調査を尽くしても、被告本人がどこにいるのかわからない場合もあります。また、会社が事実上営業を停止しており、取締役等の居場所がわからない場合も、訴状の送達ができないと判断されることがあります。
このときには公示送達といって、裁判所の掲示板に被告に宛てて呼出状を掲示し、2週間経過した時点で訴状が送達されたものとする制度があります。この場合は、被告は訴状を見ることなく裁判が開始され、いつの間にか敗訴してしまうことがあり得ます。そのため、裁判所は公示送達の実施には慎重であり、原告において被告の住所・居所等について調査を尽くすことが求められます。
まとめ
訴える相手方の居場所がわからない場合でも、法律上の要件を満たしていれば、訴状が送達されたことにできる制度があります。
弊所においても、被告の住所や居所がわからず訴状の送達ができない場合には、以下のような方法で送達場所を調査することがあります。
- 住民票等を職権で請求したうえで、公的に届け出られている住所の足取りをたどる
- 最後の住所地へ実際に行って、手がかりを掴む
被告が遠方等にいる場合は、調査会社を利用する等、ある程度の費用がかかることもあります。被告が富山県内、東京都内以外の者で住所地が不明の場合は弁護士にご相談ください。
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