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テレワークを導入したら、就業規則の変更は必要?【弁護士が解説】

法的手続の解説等 | 企業法務

2020.07.11

テレワークを導入したら、就業規則の変更は必要?【弁護士が解説】
Q.
新しくテレワークを導入します。就業規則はそのままでも導入は可能でしょうか?

 

A.
そのままでは導入できません。就業規定・就業規則を改定しておかなければ、法的問題が発生することも考えられます。導入の前には、テレワークに関するモデル就業規則を参考に、会社にあった就業規則へと改定しましょう。

 

【解説】

新型コロナウイルスの影響により、テレワーク(在宅勤務、リモートワーク)を導入する企業が増加しています。企業側はテレワークを導入するにあたり、就業規定・就業規則を改定しておかなければ、法的問題が発生することも考えられます。そこで今回は、テレワークに対応するために追加・改定しなければならない就業規則の条項例を紹介します。

※1:一般的なテレワーク制度については、厚生労働省のテレワーク総合ポータルサイトを参照してください。このホームページでは、テレワークの概要や導入方式、一般的な質問等が詳しく解説されています。

※2:今回の記事は、厚生労働省の「テレワークモデル就業規則」をベースにしています。

 

就業規則を作成する前に

まず、テレワークに関する就業規則(在宅勤務規定)を作るに際して、会社の就業規則において、委任規定を設けます。

(テレワークに関する定め)

第●条 従業員のテレワーク勤務(在宅勤務、リモートワーク勤務をいう。)に関する事項については、この規則に定めるもののほか、別に定めるところによる。

 

第1章 総則でテレワークの大枠を定める

それでは、テレワークに関する就業規則を作成していきます。なお、現在厚生労働省のホームページに掲載されている就業規則案は、令和元年以前に作成された古い情報を含みます。そのため、細かい部分について修正し、現在の就業状況に対応させることが必要です。

まず総則として、テレワークの大枠について定めます。会社によっては、第2条の定義規定において、情報通信機器の種類を具体的に記載する必要があります。

テレワーク就業規則(在宅勤務規定)

第1章 総則

(在宅勤務制度の目的)

第1条 本規定は、●●株式会社(以下、会社という。)の就業規則第●条に基づき、従業員が在宅で勤務する場合の事項について定める。

(在宅勤務の定義)

第2条 在宅勤務とは、従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社指定の場所に限る。)において情報通信機器を利用した業務をいう。

 

第2章 申請方式・服務規律を定める

次に、テレワークの申請方式や服務規律について定めます。テレワークにおいては、会社の情報を外部で利用することが多く想定されます。よって、服務規律を定めるとともに、情報セキュリティに関して従業員への意識喚起を促すことも重要です。第4条にあるように、別途セキュリティガイドラインを設け、社内で共有する必要があります。

第2章 在宅勤務の許可・利用

(在宅勤務の対象者)

第3条 在宅勤務の対象者は、就業規則第●条に規定する従業員であって、次の各号の要件を全て満たした者とする。

⑴ 在宅勤務を希望する者

⑵ 自宅の執務環境、セキュリティ環境が適正とみられるもので家族の理解を得ている者

2 在宅勤務を希望する者は、所定の許可申請書に必要事項を記入の上、在宅勤務開始の●日前までに所属長から許可を受けなければならない。なお、同許可申請については、オンラインによる手続きを行うことができる。

3 会社は、業務上その他の事由により、前項に基づく在宅勤務の許可を取り消すことができる。

4 第2項により在宅勤務の許可を受けたものが在宅勤務を行う場合には、前日までに所属長へ在宅勤務を行う旨の届け出を行うものとする。

(在宅勤務時の服務規律)

第4条 在宅勤務に従事する者(以下、「在宅勤務者」という。)は、就業規則第●条及びセキュリティガイドラインに定めるもののほか、次の各号の事項を遵守しなければならない。

⑴ 所定の手続に従って持ち出した会社の情報及び作成した成果物を第三者が閲覧、コピー等をしないよう最大の注意を払う

⑵ 在宅勤務中は業務に専念する

⑶ 第1号に定める情報及び成果物について紛失または毀損しないように丁寧に取り扱い、セキュリティガイドラインに準じた確実な方法で保管・管理する

⑷ 自宅または自宅に準じる場所として会社が指定する場所以外の場所で業務を行わない

⑸ 会社情報の取扱いに関し、セキュリティガイドライン及び関連規定等を遵守する

 

第3章 労働時間を定める

第3章では、在宅勤務の労働時間について規定します。下記規定では、テレワークでも基本的に会社の就業規則と同様の時間で勤務をするよう定めています。会社によっては、テレワークではフレックスタイム制を導入するとの規定を設けてもよいでしょう。

第3章 在宅勤務時の労働時間等

(在宅勤務時の労働時間)

第5条 在宅勤務時の労働時間については、就業規則第●条の定めるところによる。

2 前項の規定にかかわらず、会社の承認を受けて始業時刻、終業時刻及び休憩時間の変更をすることができる。

3 前項の規定により所定労働時間が短くなる者の給与については、●●規定第●条に規定する勤務短縮措置時の給与の取扱いに準じる。

(休憩時間)

第6条

在宅勤務者の休憩時間については、就業規則第●条の定めるところによる。

(所定休日)

第7条 在宅勤務者の休日については、就業規則第●条の定めるところによる。

(時間外及び休日労働等)

第8条 在宅勤務者が時間外労働、休日労働及び深夜労働をする場合は、所定の手続を得て所属長の許可を受けなければならない。

2 時間外及び休日労働について必要な事項は、就業規則第●条の定めるところによる。

3 時間外、休日及び深夜の労働については、給与規定に基づき、時間外勤務手当、休日勤務手当及び深夜勤務手当を支給する。

(欠勤等)

第9条 在宅勤務者が、欠勤をし、又は勤務時間中に私用のために勤務を一部中断する場合は、事前に申し出て許可を得なければならない。ただし、やむを得ない事情で事前に申し出ることができなかった場合には、事後速やかに届け出るものとする。

2 前項の欠勤、私用のための勤務の中断による際の賃金については、給与規定第●条の定めるところによる。

 

第4章 勤務管理方法を定める

テレワークでは、始業と就業についての管理方法を定めておく必要があります。厚労省作成の就業規則モデルには「電話による連絡」という手段が記載されていますが、実際には勤怠管理ツールやチャットツールの導入が簡便です。

第4章 在宅勤務時の勤務等

(業務の開始及び終了の報告)

第10条 在宅勤務者は、勤務の開始及び終了について、次のいずれかの方法により報告する。

⑴ 電話

⑵ 電子メール

⑶ 勤怠管理ツール

⑷ その他適当と認める方法

(業務報告)

第11条 在宅勤務者は、定期的又は必要に応じて、電子メール等適当な方法で所

属長に対し、所要の業務報告をしなければならない。

(在宅勤務時の連絡体制)

第12条 在宅勤務時における連絡体制は、次の各号による。

⑴ 事故・トラブル発生時には、所属長に連絡する。

⑵ 前号の連絡が取れない場合には、●●課まで連絡する。

⑶ 社内における従業員への緊急連絡事項が生じた場合、在宅勤務者へは所属長が連絡する。

⑷ 情報通信機器等に不具合が生じ、緊急を要する場合は、●●課へ連絡し指示を受けるものとする。

⑸ 前各号以外の緊急連絡の必要が生じた場合には、前各号に準じて対応するものとする。

2 社内報、部内回覧物については、電子メールその他適当な方法で、在宅勤務者へ連絡する。

 

第5章 テレワーク中の費用負担を定める

第5章では、給与やテレワークで発生する費用の負担について定めています。テレワークでは従業員が自宅等で勤務することにより、光熱費や通信費が発生します。光熱費や通信費をどこまで会社が負担するかについては、明確に規定しておきましょう。

第5章 在宅勤務時の給与等

(給与)

第13条 在宅勤務者の給与については、就業規則第●条の定めるところによる。

2 前項の規定にかかわらず、在宅勤務(在宅勤務を終日行った場合に限る)が週に●日以上の場合の通勤手当については、毎月定額の通勤手当は支給せず、実際に通勤に要する往復運賃の実費を給与支給日に支給する。

(費用の負担)

第14条 会社が貸与する情報通信機器を利用する場合の通信費は、会社負担とする。

2 在宅勤務に伴って発生する水道光熱費は、在宅勤務者の負担とする。

3 業務に必要な郵送費、事務用品費、消耗品費その他会社が認めた費用は、会社負担とする。

4 その他の費用については、在宅勤務者の負担とする。

(情報通信機器・ソフトウェア等の貸与等)

第15条 会社は、在宅勤務者が業務に必要とするパソコン、プリンタ等の情報通信機器、ソフトウェア及びこれらに類する物を貸与する。なお、当該情報通信機器に会社の許可を受けずにソフトウェアをインストールしてはならない。

2 会社は、在宅勤務者が所有する情報通信機器を利用させることができる。この場合、在宅勤務者はセキュリティガイドラインを満たした情報通信機器を利用するものとし、同機器にかかる費用については、協議の上決定する。

(教育訓練)

第16条 会社は、在宅勤務者に対して、業務に必要な知識、技能を高め、資質の向上を図るため、必要な教育訓練を行う。

(災害補償)

第17条 在宅勤務者が自宅での勤務中に災害に遭ったときは、就業規則第●条の定めるところによる。

(安全衛生)

第18条 会社は、在宅勤務者の安全衛生の確保及び改善を図るため必要な措置を講ずる。

2 在宅勤務者は、安全衛生に関する法令等を遵守し、労働災害の防止に努めなければならない。

 

まとめ

本記事では、テレワークに関する就業規則を検討しました。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、テレワークは急速に普及しています。それに伴い多くの業種で、勤務形態が変化しつつあります。円滑な会社運営のために、今回の記事が参考になれば幸いです。

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